天皇陛下の即位の式がありますね。
これについてはどういうふうに我々日本人は考えたらいいかということを、哲学的にじっくりと、考えてみたいと思うんですね。
実は、天皇陛下というのが日本におられたということが、非常に特殊な今までの日本の運命とですね、日本人の性格を形作ってきたわけですね。
原点は神武天皇といってもいいし、古事記と言ってもいいわけです。年代も2000年前といってもいいし、1700年前と言ってもいいわけです。
そういう細かいことではなくて、非常に大きく言ってですね、男系男子相続の天皇陛下というものを、日本が置いたわけですね。
もちろん女性の天皇も構わないですよ。日本には、全然男女の差別はありません。ものすごく西洋流に解釈して誤解している人が多いんですけれども、日本にはもともと男女差別という概念がないものですから、とりあえず天皇は男系男子の相続と決めたわけですね。
そのために、男系男子となりますと、男の子じゃなくてはダメなんです。天皇陛下の直接の男の子でなくてもいいんです。例えば天皇陛下の弟さんというのは、お父さんのY遺伝子を持っておりますので、遺伝子が同じ首都ということなんですけども、そのお子さんでもいいわけです。
結果としてそうだったので、日本が世界で唯一一番上にいる人、これを王朝といってもいいし、天皇と言っても皇帝と言ってもいいんですけど、その国の一番上にいる人がですね、変わらないと言う、奇妙なことが起こったわけですね。
例えば、典型的には中国。天子と言うんですけれども、一番上にいるんですが、漢・唐・宋・元・明・清・中で王朝が変わっていきますね。
そうしますと天子は廃絶されて墓があばかれる。もしくは殺される。
昔の墓も全部暴かれて、もう天子でもなんでもなくなってしまう。だから国というのが存在しないわけですね。
欧州、ヨーロッパでもそうです。ハプスブルグ家とかブルボン朝とかですね。現在のイギリスの王室でも、あれはドイツの王室で引っ越してきたやつなんですけど、そういう風になるので、国というのは決まらないんですね。中東ももちろんそうですし、中央アジアももちろんそうです。インドもそうですね。
結局、国というのが定着しないわけですよ。例えば中国というのは国じゃないんですね。シナという地方に漢とか唐とかいう国があったわけで、唐というのは国の名前なんですね。明というのも国の名前なんでんです。国の名前ですから明の国があるときには、そこの住民は明の国の住民なんですね。
だから全然日本と違うんです。
だから世界でですね、「日本人、日本国の国民」という意識を持っているのは、言ってみれば、日本人だけなんです。
ただ、ナポレオンがですね、フランスの皇帝になった時から、フランスは国民国家になったんですね。国民国家の誕生、つまり国民が国家を形成するようになったわけですね。
日本以外の国ですと、日本は2000年前なんですが、他の国は300年前なんですね。
全然桁が違うんです。
ですから、日本はですね、いつも日本人というのは日本人だと思ってるんですよ、実は。日本という国に日本人がいると考えているわけです。これは、非常に世界的には奇妙なんですね。
むしろ奇妙なんですよ、そっちのほうが。
この記事は、令和元年10月22日の武田邦彦氏の音声ブログの一部を、許可を得た上で文字起こしさせて頂いたものです。